石板4
コスモスの種を蒔く者・甲
コスモスの花を摘む者・乙
花壇は巨大な円環で
甲も乙も反時計回り
ぐるぐる回りながら
甲は永遠に種を蒔き
花が咲いたところで乙が永遠に摘み続ける
甲はいいところだけ持っていく乙を憎んでいて
顔も見たことないのに勝手に憎らしげな顔を想像して
反時計回りに回り続けて
いつか大量の種を乙の両眼に叩き込んで果てさせようと思っているのだけど
花壇はあまりに広すぎて
甲は結局種を蒔きながら途方に暮れるだけ
乙は誰かが自分を憎んでいることを知りつつも
顔も見たことないのに勝手に怒りに打ち震える顔を想像しつつも
反時計周りに回り続けて
最後にその人の前でにっこり笑って
根こそぎ摘んだコスモスを叩きつけて光速で逃げようと思っているのだけど
花壇はあまりに広すぎて
その人を待ちつついつまでも花を摘むだけ
いつかはどちらかが痺れを切らすのだろうけど
本当は二人とも願っているんだ
このままの時間が永遠に流れればいいのにと