ある暴風雨の夜
突然アンテナが折れて
テレビが見られなくなった
誰もいない孤島でテレビが見られなくなるということは
自分以外の人の顔が見られなくなるということだ
ボクはアンテナ売りのお兄さんが
船に乗って行商にやってくるのを待った
しかし何年待ってもアンテナ売りがその島に来ることはなく
遂にボクは怒りに任せてテレビを岩に投げつけて叩き壊してしまった
罪のないテレビのブラウン管が粉々に砕け
破片が汚れを知らぬ砂浜に飛び散った
全部アンテナ売りが悪いんだ
いつまで経ってもやって来ないのが悪いんだ
ボクはそう思って
余生を真っ暗な洞窟の中で暮らして死んだ