それは天の声だったのさ
「聞けペテン師よ!!
おまえが人々をペテンにかけるなら
一人あたり1万円を報酬としておまえにやろう!!」
売れないペテン師は喜び勇んで
巨大電波塔の上で必殺のペテンの詩を夜の街に放つ
人々はみんなペテンにかけられて
100万人だから100億円でペテン師の懐はホクホク
でもね
一度ペテンにかけられた人は
もうもの言わぬボケ人形で
そいつらが
「ペテン師様に敬礼!!ペテン師様に敬礼!!
ペテン師様に敬礼!!ペテン師様に敬礼!!
ペテン師様に敬礼!!ペテン師様に敬礼!!
ペテン師様に敬礼!!ペテン師様に敬礼!!」
と叫んで電波塔目指して巡礼にやってくるんだ
至福の腑抜け面でね
ペテン師は
いっそ彼らの巡礼の列に踏み潰されて
両眼粉々に死んでしまいたいと思ったのだけど
やっぱだめですわ
先頭のボケ人形がペテン師を踏むとそいつはバランスを崩して
100万人が前から後ろに将棋倒し
一人ずつ順にのどから黒い血を吐き出して地を走るように
それが大地にしみ込んで
木を枯れさせて水を腐らせ
街は崩れて廃墟となった
ペテン師は今日も錆びた電波塔の上で
泣きながらペテンの詩を街に響かせるのさ
圧壊する心が
止まらない涙が
絶望と孤独が
ペテンへの呪いが
夜の雨になって心地よくペテン師を濡らすんだ
ただひとり詩を聞いているはずの
月の光は今宵もただ沈黙を守る