圧縮表層構造 10



海の向こうにはハンバーガーを箸で食べる国があると聞き
ぼくは急いで高速船に乗った

待てど暮らせど陸地は見えず
ぼくは時々ロビーの片隅に置かれた究極タイガーで遊びつつ
昼も夜もデッキに立って眼を凝らしつづけた
じっと待てば船はいつかまだ見ぬ異国へ
ハンバーガーを箸で食べる人々の国へたどり着くのだと信じていた
それなのに

謎の爆発事故で船は究極タイガーもろとも爆砕沈没
救命ボートで脱出した人も食料の取り合いで
ぼく以外はみんな海の藻屑と消えてしまった

ただ一つ残った最後のハンバーガーを
ぼくは泣きながら割り箸で食べた
ボートは海流に乗ってどこまでも
ぼくの夢など知らん顔で気ままに流れつづけた


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菅井 清風(k-sugai@hoffman.cc.sophia.ac.jp)
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